一度真面目に調べたら、サインなんかできるわけがありません。
このため、倒産したHw銀行のケースでは、公認会計士が訴えられたのです。
Hw銀行が潰れる直前に出した決算報告は非常によかったのですが、二ヵ月後に潰れてしまいました。
不良債権が実は非常に多かったのです。
こうしていい加減な決算報告をした公認会計士が訴えられた今、実は銀行の公認会計士にものすごいプレッシャーがかかっていると間このことは、何十年ぶりに、というよりも史上初めて、日本の公認会計士がまともに仕事を始めたということです。
この公認会計士がまともに仕事をし始めたということも、今の貸し渋りの根底にあるわけで、アメリカのB大統領が再選に失敗した原因となった当時の米銀の貸し渋りも、「公認会計士から始まった」と言われています。
一時的に銀行の貸し渋りを助長することになっても、日本の公認会計士の皆さんが少し真面目に仕事を始めたのはいいことなのです。
もちろん、政治家の皆さんには銀行検査官いています。
今の金融恐慌については、私はかなり前から「このままでは大変なことになる。
日本経済は目茶苦茶になる」と警告はしたのですが、当初は無視され、結局大変な事態になってしまいましたが、私は今の状況を見て、必ずしも望みがないわけではないと思います。
むしろ一時に比べると、かなりよくなる方向に変わりつつあるのではないでしょうか。
なぜかというと、わずか三一カ月の間に日本の政策論議がまったく変わってきたからで体制の強化とともに、これから公認会計士制度の強化もぜひやっていだきたいという気がします。
例えば、二ヵ月前に「公的資金を導入してなんとかやろう」というのは、完全な暴論になっていました。
ところが今は「公的資金導入については、もっとやろう」という勢いになっていて、当初は一○兆円だったものが三○兆円と増えています。
公的資金導入についての今の日本の議論は、まるでタクシーのメーターを見ているようなもので、振り向いて見るたびに金額が増えているようです。
それくらいに金融問題の解決へ向けてどんどん話が進んでいるのであります。
この公的資金を導入して金融問題に手をつけようというのは、ちょっと見方を変えますと、バブル崩壊以後の八年目になってやっと金融システム問題に本当にメスを入れようという動きになっているということです。
バブル崩壊後から半年前ごろまでは、民間企業の資金需要のほうが銀行側の資金供給力よりも先に落ちていました。
資金供給は銀行の不良債権問題によって落ちましたが、それよりも先に資金需要が落ちてしまったのです。
この資金需要が落ちたのは、多くの日本企業がバブル期に膨らんでしまった借金を健全なところまで減らそうとしていたことと、規制緩和が遅れ、コストの高い日本を諦め、海外で設備投資をやることになったことが理由として挙げられます。
資金需要が先に落ちてくれば、銀行に行くと残った借り手に対して銀行のサービスは逆に昔よりよくなります。
信用力があれば銀行は一生懸命、「どうぞ、どうぞ。
借りてください」と、いくらでもお金は貸してくれます。
こういう状況ですから一般の庶民からしてみますと、銀行の不良債権問題は全然ピンとこないわけです。
庶民はそれほど困っていないのに、なぜ血税を使って我々より給与の高い銀行員を救済しなくてはいけないのかという議論になるのです。
今はどうでしょうか。
先ほど申しましたように大変な貸し渋りが発生しているわけで、庶民を直撃しています。
特に銀行からの融資減少は、中小企業を直撃しています。
そうなると企業では一般の従業員まで、だんだん「どうもうちの会社は、資金繰りが厳しいようだぞ」「ちょっと気をつけたほうがいいね」というようになります。
「あれ、ちょっとひどいことになってきたな」「貸し渋りについては、やはり銀行のシステムをなんとかしなくては」という気運が、今実際に国民の間で広がってきているのです。
そうなると、政治家も大蔵省もこの金融問題に手をつけることができるわけで、そこから三○兆円の金融安定化策が発表になったのです。
特にこの三○兆円という金額は、注目に値します。
わずか六○○○億円の住専問題であれだけ議論を費やしておきながら、いつのまにか三○兆円の支出という大変な変化があったのです。
二兆円の減税というのもH首相が自ら発表したのですから、これまで考えられなかった非常に大きな変化が起きたのではないかという気がします。
これまではあれだけ財政再建と言っていたのに、今、もうコロッと二兆円減税という話になってきています。
しかも当初は単年度だったのをもっと長く適用しようとか、いろいろな話が出てきているのです。
わずかこの二カ月の間に政策論議がまったく変わってきている質的変化に、私は非常に元気づけられます。
やっと問題の本質に、我々は近づいてきたのではないかという気がします。
ただ残念なことに、こういう政府の対策が発表されたにもかかわらず、マーケットの受け止め方にはまだ半信半疑なところがあります。
法案の細かい条項を見ますと、依然としていくつか問題が残っているからです。
どういうことかと言いますと、三○兆円の金融安定化策ですが、この中の一三兆円は銀行の自己資本強化に使うということになっております。
日本の銀行については、先にも述べたように、なにもバブル崩壊後だけではなく、バブルが崩壊する前から過去五○年間、欧米の銀行に比べて自己資本が決定的に不足していたのです。
その問題に対し、これまでは「株の含み益を自己資本と呼べるのだ」ということでごまかしてきたのですが、この含み益が株の暴落でなくなってしまいました。
そうすると本当に今銀行の資本は欧米に比べて足りないため、とにかく早く強化しなければなりません。
そんな状況に今一三兆円を入れようというのは、方向としては極めて正しいわけですし、むしろ私は、もっと早くできなかったのかと思うくらいであります。
では、この正しい方向に向かっての中身を見るとどうでしょうか。
細かい文章を読んでみると、この一三兆円が銀行に入る手続きに問題があります。
まず銀行がリストラ案のようなものを自らつくって、持って厳正なチェックをする七人の委員会まで持っていきます。
「こういう条件でぜひ優先株を買っていただきたい」とお願いしなくてはなりません。
しかも個別行ごとにやれというのです。
一行一行案をつくって持っていって、頭を下げてお願いするということであります。
それらの案に対し、七人の委員が全員一致したときのみ、政府からお金が出るという形になっています。
しかもそのプロセスの中には、過去の刑事責任を問うとか、検察も一緒になってチェックするという話にもなっています。
繰り返しになりますが、こういう場に銀行を引っ張り出そうとしても、果たして銀行がこの話に乗るのかという問題が出てきます。
もしも皆さんが銀行員だったら、皆さんが銀行の経営者だったら、果たしてこれに乗るでしょうか。
過去の何から何まで調べ上げられて、場合によっては刑事責任を問われ、私財を没収されかねません。
マスコミには叩かれるし、何をやられるか分かったものではありません。
ほとんどの銀行の答えは、おそらくノーだと思うのです。
「そんなに厳しい条件だったら、いりません。
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